| 肝硬変(1)
慢性肝疾患の終末像といわれるのが肝硬変です。その原因はHCVやHBVなどウィルスに起因するものが大半で、アルコールがそれに次ぎます。肝細胞の炎症と壊死、それに続く再生というサイクルを繰り返すうちに、線維増生・血流構造の歪みが生じ、肝組織の正常な構造が崩れていきます。構造の乱れが肝臓全体に及んだ状態が肝硬変です。この結果、肝臓は十分な機能を果たすことができなくなったり、また肝に注ぐ栄養血管である門脈の流入が阻害されるため、門脈圧亢進症が引き起こされます。元来肝臓の機能は多岐に及ぶため、その障害による症状は多彩です。何らかの肝不全症状の認められる非代償性肝硬変と肝機能低下の認められない代償性肝硬変とに分類されます。さらに障害が軽微な場合は自覚症状や通常の血液検査で異常の見られない潜在性肝硬変の場合もあります。
肝硬変(2)
慢性肝炎の場合、肝硬変に進行しないようにすることと、発ガンの抑制が治療の中心となります。ただし肝硬変といえども、慢性肝炎と明瞭に境界されている訳ではなく、連続したものであります。現在は、新犬山分類で、線維化の程度をF0からF4に分類するようになりました。F4は線維化が全域に及んだ状態で肝硬変に相当します。線維化と発ガン率は相関し、年間発ガン率は、F1の場合で0.5~0.8%、F2は1.5~1.9%、F3は2.6~2.8%、F4は4.5~5.8%と報告されています。発ガンに関しては、HBVとHCVで若干相違があるようです。HBVの場合は線維化のごく軽度な場合や、肝機能が安定している場合でも発ガンする事があるので、油断できません。肝硬変でも障害の軽度なものから、腹水や黄疸、肝性脳症の出現など肝不全状態にある非代償性肝硬変まで病態は複雑です。
肝硬変(3)
生体の化学工場といわれる肝臓の機能低下した肝硬変ですから、その症状は多彩で目に見える症状もあります。手のひらの盛り上がった部分が赤味を帯びる手掌紅斑はよく見られます。肝機能障害のため毛細血管が拡張するため生じる所見です。細い糸状の毛細血管の集合した蜘蛛状血管腫も同様で、前胸部が好発部位です。肝硬変が進行し門脈圧亢進症が進むと、門脈と静脈系のバイパスができて静脈瘤が形成されます。代表的なものは食道や胃の静脈瘤ですが、十二指腸や大腸、直腸にできる場合もあります。さらに腹壁の静脈が拡張することもあります。顕著な場合は臍部を中心に放射状に怒張した血管が広がりメドゥーサの頭と呼ばれます。肝不全になると腹水が貯まり、黄疸が出現します。黄疸は初期のうちは白眼の部分が黄色くなる程度ですが、長期になると皮膚全体がどす黒くなってきます。
肝硬変(4)
代表的な肝機能検査であるAST(GOT)、ALT(GPT)は肝細胞壊死・炎症を表し、肝臓の働きを示す指標ではありません。従って肝硬変でも安定している場合にはこれらの数値は異常を示さない場合もあります。肝臓の働きが低下すると、コレステロールやアルブミン、コリンエステラーゼ、凝固因子などの合成が障害されるため、これらが低下します。肝の線維化が進み構造の改変が起こると、血小板の低下や、γグロブリンの増加が起こります。ヒアルロン酸も肝線維化の有用なマーカーです。肝硬変では肝表面に凸凹が生じるので、その確定診断には腹腔鏡下肝生検が行われますが、超音波検査やCTなどの画像診断も肝の形態の変化を捉えられますので、診断の一助になります。画像診断や肝機能検査・肝線維化のマーカーなどの非侵襲的検査を総合的に判断することで診断されるようになりました。
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