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コラム
肝炎ウィルス(1)
慢性肝炎の大部分は、ウィルス性と考えられています。 最近は遺伝子解析の手法により、新しいウィルスが相次いで発見されました。
C型肝炎ウィルス(HCV)の発見は最大のトピックスで、非A非B肝炎の大部分はHCVが原因と判明しました。
その後、G型肝炎ウィルス(GBV−C/HGV)が発見され、残りの肝炎ウィルスも同定されたと期待されましたが、 臨床的意義は大きくないようです。次にわが国でTTウィルスが発見されましたが、健常者でも100%近い陽性率を示すなど、 肝炎ウィルスと認知されるには至りません。
結局、A型肝炎ウィルスなど強い臨床症状を示す目立ちたがりやのウィルスから 順に発見されています。しかしG型肝炎ウィルスなど病原性の弱いウィルスでも劇症肝炎との関連が指摘されるなど、 患者の条件次第では障害を引き起こす可能性があります。
肝炎ウィルス(2)
最も目だちたがりやの肝炎ウィルスはA型肝炎ウィルス(HAV)でしょう 。
HAVは急性肝炎の原因となります。B型やC型肝炎ウィルスによる急性肝炎と比べて、 発症は急激で、発熱や黄疸・食欲不振・倦怠感などの症状も強い場合が多いようです。
約1%の頻度で劇症化することがありますが、通常は完全に治癒し、慢性化することはありません。 中和抗体ができますので、一度感染すると二度とかかることはありません。
目だちたがりやですが淡泊なウィルスをいえるでしょう。潜伏期は2〜6週間で、経口感染します。 東南アジアなどの旅行中に生水を飲んだり、国内では牡蠣の生食で感染することが知られています。 診断は抗体検査(IgM−HAV)で判定します。
急性肝炎と診断されたら、肝臓の再生を促すため、安静にして肝血流を維持し、 必要十分な栄養を摂る必要があります。
肝炎ウィルス(3)
次に発見された肝炎ウィルスはB型肝炎ウィルス(HBV)です。
HBVは血液や体液を介して感染します、感染しても不顕性で一過性であることが多いのですが、 急性肝炎や慢性肝炎の原因となります。通常、感染により発症する場合、急性肝炎であり、 ごくまれに劇症化することを除いては、慢性化することなく治癒します。
しかし、3歳以下の乳幼児や免疫力の低下した状態で感染すると、持続感染し(キャリア)、慢性化することがあります。
一般に母親がキャリアの場合、出産時に感染をうけ(垂直感染)、キャリアとなる場合がほとんどです。 無症状で経過していても、成人後に急性発症することがあります。
この場合、臨床的には急性肝炎と同様ですが、 キャリアから発症した場合は、慢性肝炎へ進行し、さらに肝硬変へと進展する可能性があり、鑑別が必要です。
肝炎ウィルス(4)
B型肝炎にはいくつかのウィルスマーカーがあります。
HBs抗原はウィルスの存在を、HBs抗体は中和抗体を表わします。 すなわちB型急性肝炎の治癒後のようにHBs抗原が陰性化し、HBs抗体が陽性になればHBVが駆逐され、 治癒したこと示します。HBe抗原はHBVの増殖が活発であり、ウィルス量が多いことを示します。 HBe抗原が消失し、HBe抗体が出現すると(セロコンバージョン)、肝炎は沈静化すると考えられています。
インターフェロンやステロイド離脱療法・ラミブジン療法など、セロコンバージョンを目標に治療が行なわれます。 しかしセロコンバージョンは、遺伝子変異によりe抗原が発現されなくなっただけで、 必ずしも肝炎が沈静化していない場合もあるとわかりました。
さらに変異株HBVは劇症肝炎と関連が指摘され、油断はできません。
肝炎ウィルス(5)
1988年、米国カイロン社によりC型肝炎ウィルス(HCV)のRNAが発見され、HCVの検査が可能となりました。
そして従来の非A非B型肝炎の約95%はHCVによると判明しました。HCVは血液を介して感染します。 感染経路としては、輸血が主ですが、ほかに刺青や覚醒剤の回し打ち、かつての予防注射などの不衛生な医療行為、 さらに医療従事者の針刺し事故などが考えられます。HCV感染の最も重要な点は、HAVやHBVと異なり、 一過性感染にとどまらず、慢性化する確率が高いことです。
C型急性肝炎のうち40−60%が慢性肝炎に移行すると考えられます。 C型急性肝炎は全般的に症状が軽いため、知らないうちに慢性化している場合もあります。 C型慢性肝炎は肝硬変まで進行するものも多く、肝硬変では半数以上で肝細胞癌が発生してくると考えられます。
肝炎ウィルス(6)
C型肝炎ウィルス(HCV)に感染すると、免疫反応がおこり、HCVを撃退するため抗体が産生されます。
C100-3抗体は第一世代HCV抗体と呼ばれ、世界ではじめて開発されたHCVの検査系です。C100-3抗体の開発は画期的でしたが、 感染から抗体産生まで2-6ヶ月かかるため急性肝炎の診断に適さず、また検出感度が低く、 10%くらいの見落としがありました。
その後、コア抗体を含め複数の抗体系を組み合わせた第二世代・第三世代のHCV抗体が開発され、 検出感度は99%以上になりました。 しかし、抗体検査はHCVの存在の指標ではなく、現在もしくは過去のHCVの感染を示すものです。
PCR法は、HCVの遺伝子(RNA)の特定の領域を増幅し検出する方法で、HCV-RNAを直接検出し、 さらにRNAの量、すなわちウィルス量が測定出来るようになりました。
肝炎ウィルス(7)
インターフェロン(IFN)により、C型肝炎ウィルス(HCV)を駆逐することが、C型肝炎治療の王道といえるでしょう。
1992年にIFNが保険適応になると、それまでSNMCの注射を続けていた患者さんが、一斉にIFN治療をうけました。 私も臨床治験段階では好感触を得ていましたが、実際にはHCVが消失し、著効となるのは3割程度でした。
その後、HCVにはいくつかのサブタイプがあり、日本人に多いTb型はIFNが効きづらいことがわかりました。 またウィルスの定量が可能となり、ウィルス量が多ければ有効率が低いなど、IFNの効きやすい条件が明らかになりました。
しかしIFNでHCVが消失すれば、20−30年後には肝細胞癌が発生すると運命づけられた疾患から回避できる訳で、 有効率が低い場合でも、条件によってはIFN治療を考えるべきでしょう。
肝炎ウィルス(8)
C型慢性肝炎に、インターフェロン(IFN)治療を行っても、C型肝炎ウィルス(HCV)が駆逐されるのは、 せいぜい3割にとどまります。
しかしHCVが駆逐できなくても、IFN治療が無効であったと考えるのは早急です。 最終的にHCVが残っても、HCVが減少し、肝炎が沈静化して、さらに肝細胞癌の発生が抑制されることが期待されるからです。
慢性肝炎から肝細胞癌の発癌率(年率)の多施設での検討では、IFN治療完全著効群 (HCVが消失し、肝機能も正常化を示した群)で0%、IFN治療非完全著効群で0.8%、無治療群で2.2%という報告が あります。
HCVが完全に消失しなくても、IFN治療により、発癌率が3分の1に減少したということです。 一方、IFN治療により完全著効が得られても、5年以上経ってからの発癌も報告されており油断はできません。
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