渡辺内科・消化器科医院
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コラム

慢性肝疾患のつきあいかた(1)
肝臓は沈黙の臓器といわれ、無症状であることもしばしばです。
一方、慢性肝疾患は、インターフェロンなどでウィルスが駆除されない限り、「治らない」疾患ですから、一生付き合っていかなくてはなりません。そこで「うまく付き合っていく」ことが大切です。慢性肝疾患の治療は、肝不全や肝細胞癌で命を落とす確率を下げるという、未来に対するものです。
一方、今現在の生活も大事なわけで、現在も未来もQOL(生活の質)を高めることが「うまく付き合っていく」ことです。わずかなGPTの変動で一喜一憂したり、肝機能の悪化を恐れるあまり、現在の生活が消極的になるようでは、うまく付き合っていることにはなりません。
一方、必要な医療を受けないために、肝機能が悪化したり、肝細胞癌の発見が遅れるようでは、肝疾患との付き合い方としては最悪といえるでしょう。

慢性肝疾患のつきあいかた(2)
慢性肝疾患と付き合っていく場合、自分の疾患について知ることが基本となります。
慢性肝炎か肝硬変か、その障害の程度や合併症の有無などの現状を把握し、現在および将来の問題点を知ることです。
その上で年齢や体力、生活状態など総合して診療計画を立てます。すでに肝細胞癌を合併していたり、肝不全状態にある場合は、当然それらの治療が最優先となります。致命的となりうるこれらの合併症を回避・コントロールすることが最終的な治療目標ですから、病状により治療目標・診療のスタンスが異なります。
進行程度が軽ければ、「進行を押さえる」ことが治療目標となりますが、進行するにつれ、肝細胞癌の発生率が高くなり、合併症が起きやすくなるので、「進行を押さえる」ことから「肝細胞癌の早期発見や合併症の予防」へと、診療のスタンスが移っていくことになります。

慢性肝疾患のつきあいかた(3)

「進行を押さえる」ことについて、C型を代表とするウィルス性慢性肝炎について述べます。
理想的には、ウィルスを駆逐して肝炎自体を直してしまうことです。これには、インターフェロン療法が唯一のもので、有効率や副作用などの問題はありますが、治療の王道といえるでしょう。ウィルスの駆逐が困難な場合、GPTを下げる事を目標にします。
GPTは肝細胞の障害の指標ですから、GPT値と時間の積の総計が、進行度と考えられます。またGPTが安定している方が、肝細胞癌の発生も少ないと考えられます。GPT値は、低いに越したことはありませんが、基準値の2倍以下を目標とします。
基準値の2倍以下で安定していれば、経時的に肝組織を見ても、進行は乏しいと報告されています。
GPTを下げるためには、強力ミノファーゲンCの静脈注射が有効で、広く行われています。

慢性肝疾患のつきあいかた(4)
インターフェロンが有効でない、あるいは使えない場合は、強力ミノファーゲンC(SNMC)の静脈注射でGPTを下げることができます。
しかし、その効果は個々で異なり、投与量が少なくても速やかにGPTが低下する場合も、大量に使ってもわずかしか下がらない場合もあります。SNMC投与量と投与回数は、1回40mlから100mlを、週1回から連日と様々で、GPTの数値とその反応をみながら、生活パターンを考慮して決めます。GPTの低下は、SNMCを使っている期間に限られ、中止すると再び上昇してしまします。
従って、いったん投与を開始すると、どうしても長期間になり、投与回数が多い場合は、長期の外出ができないなど、日常生活に影響することになります。GPTが正常域に入ったら、リバウンドが起きないようゆっくりと減量していきます。

慢性肝疾患のつきあいかた(5)
強力ミノファーゲンCやウルソを使ってGPTを安定させる目的は、肝炎の進行を抑制するとともに、肝細胞癌の発生する確率を低下させることにあります。しかし、安定している慢性肝炎でも発癌することはあります。
そこで肝細胞癌を視野に入れた治療が必要です。肝細胞癌は2cm以下で発見できれば、手術やエタノール(PEI)やラジオ波(RFA)など局所療法で、完璧にコントロールすることは可能です。肝細胞癌の発育速度に基づいた検討で、発育の早い肝細胞癌を含め、2cm以下で発見するためには、3ヶ月毎に超音波検査を行うことが必要とわかりました。この3ヶ月という期間は、癌の治療という立場に基づくもので、発癌の確率に基づくものではないので、慢性肝炎でも肝硬変でも同じです。
ただし1cm前後の肝細胞癌を超音波検査で発見するには、熟練した検査技術が必要となります。

慢性肝疾患のつきあいかた(6)
肝細胞癌の早期発見には、超音波検査が中心になります。
超音波検査は、苦痛もなく、簡便なため繰り返し行うことができ、1cm以下の小病変を発見することも可能です。
しかし走査した部位しか画像化されず、肝硬変などで肝内が不整な場合は観察しづらいなど、小さな病変の発見には、熟練が必要であり、その診断能は施行者の技術に負うところが大きい検査といえます。また横隔膜直下など死角がありますので、肝細胞癌の早期発見には、他の検査も組み入れることが必要です。
X線CTは撮影した部位はすべて画像化されますので、検査技術の影響は少なく、客観的評価が可能です。肝辺縁部や小病変の検出に限界がありますが、造影剤の急速注入を併用することにより、検出能も向上し、質的診断も可能となります。超音波検査を補うために、X線CT検査も年2回くらい行うと良いでしょう。

慢性肝疾患のつきあいかた(7)
肝疾患が増悪すると、線維化が進み、改築が起こります。
改築が完成すると肝硬変になるわけですが、こうなると様々の合併症に留意する必要があります。
まず食道静脈瘤などの門脈圧亢進症に注意します。門脈は消化管や脾臓から、肝臓で処理する物質を運ぶ血管系ですが、肝の改築が進むと門脈血の流入が困難になるため、門脈圧が上昇し、バイパス血管ができます。
代表的なバイパス血管が食道静脈瘤で、出血する危険がありますので、定期的に内視鏡検査を受ける必要があります。
かつては、手術が唯一の治療法でしたが、現在は内視鏡を使った治療が広く行われています。
内視鏡下に直接静脈瘤に硬化剤を注入したり、特殊な器具を使って静脈瘤をリングで結紮して治療します。経皮的に肝臓内の門脈からカテーテルを挿入し、静脈瘤の血管を硬化させる治療もあります。


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